隠し部屋

【公開】2011/06/19 【文】:搭杢煉瓦 【他者変身】 「ねぇ、琴音ちゃん。これから私の家に遊びに来ない?」 「うん。今日は用事ないし構わないよ」 私は学校帰りに友達の真奈美に彼女の家へ誘われた。 真奈美とは高校に入学した頃からの付き合いで、現在三年生になってもクラスが同じで 仲が良く彼女の家に直々遊びに行っている。 彼女は中学を卒業した直後から両親が仕事の都合で海外へ行っており、ずっと一人 暮らしをしていると言っていた。なので今まで私は彼女の両親に一度も会ったことはな く初めて彼女の家へ行ったときも彼女一人っきりだったのだ。 「さぁ、ついたよ。ゆっくりしていってね」 「うん、お邪魔しまーす」 私は彼女の家に着き早速中へ入り寛ぐことにした。 玄関の扉を開けると目の前には廊下があり二階へ続く階段があった。左を向くとトイレ や浴室があり右側には六畳ほどの和室。そして中央にはリビングルームとダイニングル ームがある。 私たちは階段を昇り二階へ行った。 そこには八畳ほどのフローリングルームが一部屋と和室が一部屋あり、それらの部屋には それぞれ窓がひとつずつ付いている。 私たちはフローリングルームのほうの部屋へ入った。 中に入るとそこにはベッドにクローゼット、姿見、学習机、テレビ、大きめな姿見、本棚 、リビングテーブルがある。ここが彼女の部屋なのである。 彼女は部屋に入ると制服のブレザー、ブラウス、ネクタイ、チェック柄のプリーツスカ ートを脱ぎ、クローゼットにしまいトレパンに半袖シャツと身軽な服装に着替えた。 「それじゃあ、お菓子でも用意するからここで待っててね」 「はーい」 彼女は下の階にあるダイニングルームへ向かった。 私は彼女が下に行くのを確認すると私は密やかに気づかれないように身の周りを調べた。 実は私にはこの家に訪れているときからずっと気になったことがあるのだ。 それは家の間取りである。 外からこの家を眺めると二階には三つの窓が存在するのだ。 二階には二つの扉があり二部屋しかないと今まで思っていたのだがそうではなく二階に は三つ目の未知なる隠された部屋が一つ存在することになるのだ。 それも外から見た感じでは彼女の部屋の隣にあるようでカーテンがずっと掛けっぱなし になっており中の様子が全く見えなかった。 それに私が彼女の部屋に遊びに来るとき、たまに女性の小さな唸り声が聞こえてくる。 彼女に『あの窓の部屋』について聞こうと思ったのだが彼女から冷たいオーラを感じて しまい聞きづらく何度も断念してしまった。 だけど好奇心の強い私はどうしても気になり彼女の部屋の隣にあると思われる部屋に入 ってみたくなった。 私が今までこの家に来て見渡す限りでは、その部屋に入るための扉がない。 壁と同じ色とかで気づかないだけかと思い、その辺を叩いてみたのこともあるのだが やはり扉は存在しなかった。 そこで私はその部屋へ通じる扉がおそらくこの彼女の部屋のどこかにあるのだろうと勝 手に結論付けた。 私は今日彼女の部屋を隈なく探すことにした。私はその部屋に接していると思われる本 棚と姿身、クローゼットが怪しいと踏んだ。 もしかしたら裏側にその部屋への入り口となる扉があるのではないかと思い調べること にした。 まず最初に姿身の裏を見たり叩いたりしたのだが何もなかった。 次に私はクローゼットを調べた。だが少し動かして眺めたのだが何もなかった。 最後に私は大きめな本棚を調べた。 私は本を何冊か取り裏に扉があるのかどうか確かめることにした。 そのとき本と本の隙間から一枚の写真が見つかった。 そこには彼女と彼女の両親と思われる人物と彼女と同じくらいの年齢の少年が写っていた。 そういえば以前、彼女の中学時代の知り合いから聞いた話なのだが、彼女の父親と別の 女性との間で産まれた腹違いの弟がいるそうだ。 彼女は一言も私に話していないのだが、もしかしたら彼がそうなのだろうか…。 写真を見る限りでは少年は顔を下に向けており暗い表情をしていた。目を細めており家 族を睨み憎んでいるようにも見える……。 家族とは打ち解けていない様子で顔も似ていなかった。 血の繋がりがないのではないか、と思えるほど似ていなかった。 さらに聞いた話ではその少年は彼女の高校入学の頃から神隠しにあったかのように突然 姿を消したように見かけなくなったという…。写真に写っている彼に関して謎が深まる ばかりであった。 気を取り直して私は本をある程度までどかすと壁に人がしゃがんで通れるくらいの大き さの穴を見つけた。どうやら隣の部屋に通じるらしい。 私はついに未知なる部屋への入り口……隠し部屋への扉を見つけたのである。 私は息を飲んで深呼吸してそこを進んだ。 そして隣の部屋へ入った私はさっそく辺りを見渡した。 そこは八畳ほどのフローリングルームでまだ外は明るいというのにカーテンがしっかり と閉められていた。他には彼女と同じ或いは似たような学習机、姿見、リビングテーブル 、ベッド、本棚、クローゼットが同じ配置で置かれていた。 彼女の部屋を真似てわざと似せているようにも見える。 そして椅子にはひとりの少女がいた。 見た感じでは私と同じくらいの年齢の人であり、何ヶ月も髪を切っていない感じの長髪に 、ボロボロなシャツとズボンを身に付けている少女が全身縄で縛られ拘束されていたの だ。口には猿轡をされておりしゃべれない様子だった。 少女は呆然と屍のように下を向いていたのだが私の存在に気づいたようで私のほうを見 つめた。 私も少女の顔をしっかりと見るとそこには…。 「そ…そんな!」 私は信じられない光景でも目の当たりにしたかのように驚愕してしまった。 そこには紛れもなく私の友達…真奈美の顔があったのだ。 彼女なら確かにさっき下の階にあるダイニングルームへ行ったはずなのに、この隠し部屋 に彼女と同じ顔をした少女がいる……。 私はあまりの想定外な出来事に直面し、身体に冷気が伝わり身震いしてしまった。 私は落ち着き、とりあえず目の前にいる彼女が苦しそうだったので猿轡を外し縄を解こ うとした。 「大丈夫?しっかりして!もうちょっとで全部解くからね」 私がそう言うと……。 「に…にげて……私のことはいいから…早くにげて!そうしないと私の姿に化けた怪物 に捕まってしまう…」 彼女は震えながら言った。 「怪物って?」 「あああ……う、うしろ…」 「えっ?後ろに何かあるの?」 私は後ろを振り向こうとした。 だがそのときちょうど私の肩に後ろから誰かの手が乗った。 私は慌ただしく後ろを振り返るとダイニングルームから戻ってきた彼女がニコリと笑み を浮かべながら私を見ていた。 だが目は笑っておらず、むしろ私を睨んでいるように見える。 まるであの写真に写っている少年のように……。 「琴音ちゃん、お菓子もってきたよ。……だけど残念、もう食べられないね」 彼女は不気味に微笑みながら最後にそう呟き、私の首に手を伸ばし強く握りしめた。 <了> ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体等は一切関係ありません。
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