不可抗力(第14話)

結奈(孝雄)はとっさに満員電車の中に駆け込んでいき間もなく電車は発車した。 (ふぅ〜、これなら追ってこれないだろう。今、知り合いに遭遇するといろいろと面倒 くさいことになりそうだしな。む・・・・待てよ!?アイツ・・・・あの少年のときも 別に問題なく成り済ますことができたし、今回も別にその場から逃げなくてもなんとか なったんじゃ・・・・。まぁ、いいか。過ぎてしまったことは・・・・・) そう考えているうちにも次の停車駅に着いた。人は大勢そこで降りたのでとりあえず座る ことにした。 (とりあえず、乗ったはいいもののどこで降りようかな) 電車には大勢の人が降りたのだがそれと入れ替わりにまた大勢の人が入ってきて満席の 状態となってしまった。 結奈(孝雄)の目の前にはひとりの老人が立っていた。 老人の顔を伺うとなんだかとても苦しく辛い表情をしていた。 結奈(孝雄)は無視しようと思っていたのだが周囲の人からの『席を譲ってあげろ!』 という重圧を感じ取ってしまい仕方なく席を譲ることにした。 (ちっ、しゃーねーな!) 結奈(孝雄)は心の中でそう囁きつつも・・・・・・ゆっくりと立ち上がった。 そして・・・・・ 「おじいちゃん、良かったらどうぞ〜」 老人にやさしく声を掛け席を譲ってあげた。 「すまんのぉ〜。いつもいつもお嬢さんのお気に入りの席を取ってしまって・・・」 「いえいえ、別に構わないですよ〜(むっ、『いつもいつも』?もしかして、日記帳に書 かれてたのがこの爺さんってわけか・・・・。それにしてもOLといい、あの少年といい 、ホームレスのおじさんといい、この爺さんといい・・・・何の因果か分からないが結 奈ちゃんの知り合いによく合うなぁ・・・。神様でもいて俺を試してるのか・・・。ま さかな・・・・)」 そう考えているうちにもいつの間にか次の停車駅に着いた。結奈(孝雄)はとりあえず そこで降りることにした。老人も席を立ち上がり降りようとしたのだが・・・・・ 老人が手に持っている小説本から一枚の写真が落ちたのに気が付き偶然それを拾った。 (仕方ねーな。渡しておくか・・・・) 結奈(孝雄)はそう思いつつ渡そうとした時、人混みに紛れ一時・・・・・老人を見失 いかけたのだが近くにある椅子に腰かけ鞄の中に小説本を入れようとしていたところを 発見し写真を老人に渡すことができた。 「おじいちゃん、これ落としましたよ」 結奈(孝雄)は老人にやさしく声を掛けた。 「おお、すまんすまん。こんな大事な物を落とすなんてわしとしたことが・・・・。あ りがとう、お嬢さん」 「いえ、当然のことをしたまでですよ。・・・・・あの、そこにうつっているのは御孫さ んですか?」 写真には老人と一緒に笑顔が素敵な可愛らしい小さな女の子がうつっていた。 「うむ。わしの大切な孫娘なんじゃ。来年の4月に小学校に入学する予定なんじゃが・・・」 老人の顔色はまたして苦しく浮かない・・・・どこか悲しい表情をしていた。 「どうかされたんですか?」 「孫娘は生まれつき心臓が弱くて現在入院中で長くても残り半年の命だって御医者様に言 われたんじゃ。・・・・・海外の最先端の手術だったら治るらしいんじゃが・・・それ を受けるには1億円のお金が必要でのぅ・・・・・・・もう一度、孫娘の元気な笑顔が 見たいものじゃ・・・・」 「・・・・そうだったんですか。すみません。変なことを聞いちゃって」 「いやいや、こちらこそすまんかったのぉ。こんなに重い話をお嬢さんに話してしも うて・・・・」 「あの、これから病院のほうに行かれるんですか?」 「そうじゃが・・・?」 「私も御孫さんに会ってみたいので同行してもいいですか?」 「恩人であるお嬢さんなら大歓迎じゃ。きっとわしの孫娘も喜ぶぞぃ」 「ありがとうございます〜、おじいちゃん(まぁ、いいっか。こういうのも。どうせ、 まだ時間あるし暇つぶしだ)」 結奈(孝雄)はその場のノリで言っただけのつもりだが老人に同行し・・・・・入院中 の老人の孫娘に会いに行くことになった。 (第15話へ)


※執筆:2012/11/24〜2012/11/25
※公開開始日:2012/11/25



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