想ひ出のシャッター(後日談B)



身体の部位が入れ替わる特殊なカメラにより、交換が結果的に全身に渡り、全身が中年
男性・・・・・・・・・里香は秀徳に・・・・・・・梨菜は朔義になってしまい、古び
た家の部屋の中で絶望に陥っていた。

「私たち・・・・・・これから・・・・・・・・どうすれば・・・・・・・。家に帰り
たいよぉ〜〜・・・・・・・・ぐすんっ!!!」

「梨菜ちゃん・・・・・・・大丈夫・・・・・・・・きっと・・・・・きっと・・・・・
・・・・・・・なんとかなるから・・・・・・・ぐすんっ!!」

二人は昨日の身体が奪われた悪夢のような夜から眠れず、ずっと泣き続けていた。

時刻はもうすでに朝の六時になっていた。
今日は修学旅行の最終日。本当であれば家に帰宅する日なのだが、彼女たちはあの男た
ちにより身体を全身交換されてしまい帰れなくなってしまった。

「里香ちゃん・・・・・・これから・・・・・・・・・どうしよう・・・・・・・。」

「う〜〜〜ん・・・・・・・・・・・。」

彼女は今後のことを手を組んで右往左往に歩きながら考えていた。全身麻酔の効果は夜
中の二時頃に切れていて自由に動かせるようになった。

ガタンッ!!

彼女が廊下の床の一部に足を踏むと床が緩く異変を感じた。その付近に注意深く目をや
ると同色であまり見分けがつかないのだが引き戸があった。

「ねぇ・・・・・・梨菜ちゃんっ・・・・・・・これって・・・・・なんだろう・・・・。」

「どうしたの・・・・・里香ちゃん・・・・・。」

「ここ・・・・・開けてみようよ・・・・・。」

「そうだね・・・・・・。」

彼女たちはその引き戸を開けることにした。すると、そこには地下に続く階段があっ
た。彼女たちは何があるのか気になってしまい、下に降りるとずっと通路が続いていた。

そして、真っ直ぐにいくと一つの部屋に直面し、中に入ってみると・・・・・・・。
そこにはいろいろな機械、計器など実験に使う道具がたくさん置いてあった。

中には・・・・・身体の一部が入れ替わる特殊なカメラに似たようなカメラもあったの
だがスイッチを押しても動じなく、他の物も壊れているようで動じなかった。

それらはこの建物の築年齢同様に古びているのだが、構造が少し複雑であり現代の機器に
しては少し高度だった。

二人はそれらが何なのか気になり、いろいろ調べてみると机の引き出しの中に一冊の日
誌を見つけた。表紙には『実験日誌』とだけ書かれていた。下のほうに人の名前らしきも
のも書かれていたのだが文字がぼやけており読めなかった。

二人はページを捲ることにした。だが所々、ページが引き裂かれていたり文字がぼけて
いたりして一部のページしか読めなかった。

そこにはこう記されていた。


『西暦2309年08月14日、快晴・・・・・・・・・・・・・ 実験初日目 今日は最高の快晴日和であり 私たちは今日、コノ実験を試みることにした 装置の具合も快調であり 何ら支障もなく実験は成功した 実験三日目 今日も快晴に恵まれ実験を試みることにした 前回は物を送ることに成功したため 今日は鼠を送ることにした 数時間後、無事に生還し実験は成功した 実験十三日目 今日は私と助手四名を実験器具等を揃えて過去の世界へ送ることにした 私たちは今から10年前の西暦2299年へ飛ぶことにした 実験は順調に思われたのだが、システムにエラーが発生し、 340年前の西暦1969年に来てしまった 装置が故障しバッテリー大量消失のため帰還できず 実験二十日目 バッテリー消失から七日が経過したのだが 未だにバッテリーの回復はできず 実験三十五日目 装置内に未知のウイルスが発生 助手四名が昏睡状態 今日もバッテリーは戻らず 実験三十八日目 助手四名死亡 バッテリーは戻らず 実験四十五日目 私も間も無く命が耐える バッテリーの回復は今もできず おそらくは何十年もの月日が必要であろう              』
「ねぇ、これって、もしかして・・・・・・・。」 「うん・・・・・・・。」 二人は他にも棚の中や引き出しを覗くといろんな書物を発見した。そこには、日誌に何度 も書かれているその装置の設計図等が紛れ込んでいた。 その装置は家の形をしていた。彼女たちはそれを見て『この家』が『装置』であることに 確信した。 「もしかして・・・・・・これで・・・・・・今までのこと、やりなおせるのかも。」 「うん、やってみよう。」 至る所を探すとコンピュータが置かれている場所があり、そこに時間と場所を設定する ところがあった。 「じゃあ、やるね!!」 「うんっ!!」 里香が時間と場所を設定し最後に作動スイッチを押すと、空間が徐々に歪み始め、場面が 急に移り変わった。 「あっ、あれっ、ここは?」 「ここってホテルの入り口?」 「あれっ、里香ちゃんっ、身体、元に戻ってるよ!!」 「梨菜ちゃんこそ!!」 「えっ、これ、どういうこと?」 二人はホテルの自分の部屋へ行き、自分の姿を見て元の身体に戻っていることに確信した。 日付をみると、今日は自主見学の日。時刻は朝の八時だった。 「そっか〜〜、私たち、過去に戻れたんだね。」 「うん、やったね。里香ちゃんっ!!」 彼女たちは過去に戻り、『自主見学の日』をやり直した。二人だけではなく友達数名と歩 き東京の至る所をまわった。地図に詳しい友達がいたため帰りも迷うことはなく帰ること ができた。こうして彼女たちは何事もなく楽しい修学旅行を迎えることができた。
修学旅行から帰って一週間後のこと。 里香が学校の帰りに梨菜の家に遊びにきたときのことだった。 「あれ、そういえば、私たち、自主見学、二回やったよね!!」 「どうかな・・・・・・・・・・・・全然覚えてないや・・・・・・・気のせいなん じゃないかなぁ・・・・・・。」 「あはは。やっぱり、そうかもねぇ〜〜。」 同じ日を二度経験したせいなのか、最初の『自主見学での出来事(悪夢)』が新たに出 来た二度目の『自主見学の思い出』により記憶が上書きされ抹消されていた。 彼女たちの悪夢のような出来事は記憶から葬りさられ、修学旅行での楽しい思い出だけ が蓄積されたのである。 写真を見ると、そこには修学旅行で友達と過ごした楽しい思い出がたくさん映し出され ていた・・・・・・・。 (おわり)
「目次」ページへ戻る「おなにっき(((( *ノノ)」トップページへ戻る
inserted by FC2 system