ごきげんミゥ♪ ♯3「ハロウィン」【style type2】
【文、絵】:搭杢煉瓦



休日の昼頃。

俺は長馴染みの『逢塚ミナト』の家でハロウィンの飾り付けを手伝っていた。

「ごめんね、手伝わせちゃって。」

「いや、別にいいよ。今日どうせ暇なんだし・・。」

「そう・・・ありがとう。そうだ・・・ついでに悪いんだけど、これから一緒に買い物
に付き合ってくれない?」

「うん、別にいいけど、何を買うの?」

「ここらへんに南瓜のアクセサリをつけたいと思ってるんだけど、どうかな?」

「そうなんだぁ。確かにそこにつけると見栄えがいいね。」

「じゃあ、さっそくいきましょうか。」

「そうだね。・・・・あっ、悪るい・・・家に財布置いてきたから、少し待ってて!」

俺の家はミナトの家とは三軒隣になり、すぐに着いた。

扉を開け家の中に入ると・・・。

リビングからテレビの音が聞こえた。

《・・・・続いて次のニュースです。昨夜未明、○×大学付属病院で妊婦の体内から
人間のミイラらしきものが発見され・・・・・関係者によりますと・・・・・・・》

ピッ!

俺はリモコンを手に取りテレビを消した。

「うぅーっ、いま、ミウが見てるのにー><」

気がつくとソファーには丸まった子猫の姿があった。

「ああー、いたのか、ミウ。」

その子猫の名前は『ミウ』。
小学生の頃に散歩中に行方不明となったメスの飼い猫の名前を借りて名づけた。

そんな『ミウ』との出会いは三ヶ月前のある日の夜のこと。
アルバイトの帰りに道端に倒れているのを発見し、拾って家に連れて帰り保護した。
朝になって様子を見ると(耳や尻尾を除いて)人間の女の子の姿になっていたことには
驚かされた。

その日以来、一緒に暮らすこととなった。

俺は三歳の頃に母親が不治の病ですでに他界しており、父親のほうは仕事の都合で海
外のほうに出張中で半年から一年に一回ほど帰ってきて顔を合わせる程度だった。

そのため誰かと一緒に暮らすというのはほとんど初めてであり最初は戸惑っていたのだ
が、今はもう馴染んでしまった。


「おっ、ここにあったのか・・・。」 俺はそう言いながらリビングのテーブルに置き忘れた財布をポケットにしまい、リビン グを出ようとした。 「雄一、これからどこかに出かけるの?」 「ああ・・・これからミナトと一緒に買い物に行くんだ。」 「ミウも一緒に行くぅ〜〜。」 「うん、それじゃあ、準備できたらいこうっか。」 「わーい。」 ミウは子猫の姿から六歳くらいの女の子の姿に変身した。 最初の頃は徐々にゆっくりと人間化していったのだが今ではリモコンでテレビ番組の チャンネルを変えるかのように瞬時に切り替わることができるようになっていた。 今のところ人間化も時間が経つに連れて徐々にケモノ(猫)に戻ってしまう。人 間の姿を維持できるのは最高で十六時間。再び人間化するに一時間の休憩・休息が必要だ。 他にもミウはいろいろな人・物へ異形変身できるのだが自身の姿の人間化とは違って 三分程度で元の姿に戻ってしまう。
ミウは全裸のまま自分の部屋に行った。 そして数分後、以前ミナトからもらった子供用の服を着たミウが戻ってきた。 「雄一・・・準備できたから行こうっ!!」 「ああ、それじゃあ、行こうっか。」 俺はミウを連れて家を出てミナトの家へ向かった。 そのとき・・・。 「こ・ん・に・ち・は。」 道を歩いている途中、後ろからリクルートスーツとブラウスにタイトスカートを見に 付けた二十代後半くらいのスタイルの良いOL風の女性が話しかけてきた。 「あ、こんにちは。加奈お姉さん。」 最近、隣の空家に越してきた加奈お姉さんと偶然出会った。 彼女は銀行員でありいつも真面目に働いている。高校時代に彼女の姉が銀行強盗に襲わ れたときに彼女が得意の剣道で姉を助けたこともあったらしい。 「雄一君にミウちゃんじゃない、これからお出かけなの?」 「あっ、はい。これから、買い物に行くんですよ。」 「加奈さんはこれからお仕事なんですか?」 「ええ、そうね。これからちょっと銀行のほうに行かないといけなくなったのよ。」 「休日なのに大変ですね。頑張ってくださいね。」 「うん、ありがとう、それじゃあね、雄一君にミウちゃん。」 加奈お姉さんは去っていった。
「あっ・・・雄一君・・・・それにミウちゃん!!」 「おお、ミナト!!待たせたみたいで悪かったな。」 「別にいいよ。それじゃあ、行こうっか。」 俺とミウはミナトの家に行き合流し一緒に買い物に行くために商店街まで歩いた。 十五分後のこと。 商店街に着きアーケードを歩いていろんなお店を巡った。 明日はハロウィンということもあって店には珍しい物がたくさん置かれていた。 着ぐるみ店の木台にはセーラー服を着た可愛らしい中学生くらいの女の子が座って いた。見ると胸のところに札が張っていた。そこには・・・・。 【少女着ぐるみシリーズ第一弾「オヤマ コトミ」 毎日がハロウィン気分!! これを着てあなたも美少女に!! ¥300,000〜】 とだけ書かれていた。 (へぇ〜〜、珍しいものがあるんだなー、あれが着ぐるみなんだぁ。どうみても・・・ 人間だよな・・・。最近の科学ってすごいんだなぁ。) その隣の店には・・・・・・・。 【ハロウィンの想い出にヒトトキのシャッターを・・・】という表札が張ってある カメラ屋を見つけた。入ろうと思ったけど、店の前には二人の少女が絡んでいる卑猥な 写真が飾られておりアダルトなほうのお店だと思った。 (なんだか、気になるなぁ、でもミウとミナトが近くにいるから見ちゃいけない。) 若干下心はあったのだが、ミウやミナトに悪いと思いすぐに目を逸らした。 そしてしばらく歩くと一軒のお洒落な雑貨店があった。 「ねぇ、あそこに入ってみようよ。」 「おお、そうだな。」 中に入るとハロウィンのためのいろいろな装飾品があった。 「あっ、ミウ、このぬいぐるみほしいっ><」 ミウは前方にあるクマのぬいぐるみを指差した。見るからにそれは中古品のようだった。 そのぬいぐるみは所々、細かい穴や傷があり特に酷かったのは、ぬいぐるみの右手部分 にある親指が入るくらいの穴があった。 だが、ぬいぐるみに無関心で大雑把な自分としては特にどうでも良かった。 「クマのぬいぐるみかぁ。ん・・・五千円!?少し高いなー。あ・・・・しまった、 財布の中に千円しかないないんだった。別の安いものだったら買ってあげてもいいよ。」 「やっ、やああああっ、ミウ、これほしいっ>△<」 「参ったなー。」 「雄一君、私が出すよ。」 「気持ちは嬉しいけど、なんだか悪いなー。」 「雄一君にはいつもお世話になってるし、これくらいお礼をさせて・・・。」 「・・・・ありがとう。今度アルバイト代が入ってきたら返すよ。」 そうしてミナトはミウのためにクマのぬいぐるみを買ってあげた。 「やったー。」 ミウはそれを手に取った。ぬいぐるみの右手部分にある特徴的な穴に親指を 入れて持ち上げることができた。どうやら中にはあまり綿が入っておらず軽いようだ。 「良かったな、ミウ。ちゃんとお礼を言うんだぞ。」 「ありがとう、ミナトお姉ちゃん。」 ミウはミナトにお礼を言った。 「どういたしまして。ミウちゃんに喜んでもらえてうれしいよ。」 そうして俺らは店内にあるものを見て回った。 「雄一君っ、こっちにいいものがあるよ。」 「おっ、ほんとだ。これは確かに綺麗だな。」 そこには南瓜のアクセサリがたくさんあった。 「じゃあ、これ買おうっか。」 「おお、いいね。」 そうして商品を買い、用事を済ませ、店を出た。 「ミウ、お腹すいたー。」 「ああ、そういえばもう13時か、俺もお腹すいてきたなー。」 「そうだ、この辺に新しく喫茶店ができたんだけど行ってみない?」 「おお、そうだな。そこでランチを食べようっか。」 アーケードを抜けて五分ほど歩くと、道が封鎖されており、近くには『永田クリーン ワークスジャパン(株)』と書かれている数台のトラックがあった。 その付近に作業服に帽子を身に付けた二十歳前半くらいの男性四人が待機していたの で話しかけてみた。 「あの〜〜、何かあったんですか?」 「ああ、実はアソコに建っている幽霊が出ると噂されている廃ビルが今度取り壊され ることになって、危険が及ばないようにこの先は今日からしばらく通行止めになった んだよ。なんだか、迷惑かけて悪いね。」 彼らのうちの一人・・・黒髪で赤い瞳をしている男が親切に答えた。 「そうだったんですか〜〜。」 「ミナト・・・・仕方ないから、迂回しよう。」 「そうだね、雄一君!!少しかかるけどいい?」 「ああ、それなら問題ないよ。」 「そう、じゃあ、行きましょう。」 「おう。」 十五分後、ミナトの言っていた喫茶店に着いた。 席に座るとさっそくメニューを開いた。 「へぇ〜〜、ココって安いんだなぁ。」 「ええ、最初に来たときはびっくりしちゃった。」 「じゃあ、さっそく何か頼もうか。」 「ミウっ、これがいい、これ食べたいっ><」 俺たちは喫茶店でランチを食べゆっくりと休んだ。 「おお、もう14時30分か。時間って早いもんなんだな〜〜。そろそろ出ようっか。」 「ええ、行きましょ。」 そして勘定を済ませて店を出てミナトの家に戻ることにした。 だがその途中、道の端にあるドブに何かが落ちていた。 「雄一君、あれ、なんだろ!!」 「おっ、南瓜の杖か。」 そこには風変わりなデザインの南瓜のスティックが落ちていた。 「わーい、これ、ミウのものっ!!」 ミウはそれを手に取った。 「ダメだぞっ、ミウ。それは落し物なんだから交番に届けないと・・・・。」 俺はミウから南瓜の杖を取り上げた。 「うぅ〜〜、返してっ、返してっ、それっ、ミウのもの〜〜>△<」 「だーめ!!」 「むぅ〜〜、雄一のイジわるぅ〜〜><」 そして落し物を届けるために一番近くにある交番へ向かおうとしたのだが・・・・。 『待たれよ、人間!!』 いきなり南瓜の杖の口の部分が動き人間の言葉を発した。 「かっ、南瓜の杖がしゃべった・・・・。」 「そ・・・・そんな・・・。」 俺たちは驚いた。 『驚かせて済まなかった、人間。我は神より遣わす南瓜の精霊。主らは我を助けてくれ た。お礼がしたい。願い事を一つだけ叶えて進ぜよう。』 「南瓜の精霊かぁ〜〜。ミウっ、何か願い事はあるか。」 「ミウ、その南瓜の杖がほしいっ。」 『承知・・・。』 すると南瓜の精霊が光輝き、細かい光の粒を放って『南瓜の精霊』にそっくりな 南瓜の杖を形作った。 『願い事は叶えたぞ・・・。さらばだ、人間・・・。』 すると南瓜の精霊は実体が分散され光の粒となり風とともに去っていった。 ミウは精霊により作られた南瓜の杖をしっかりと掴んだ。 「わーい、わーい。これ、ミウのものっ。」 「良かったな、ミウ。」 「良かったね、ミウちゃん。」 「うぅ〜〜。」 ミウは喜んた。 「それじゃあ、さっそく戻って飾り付けしましょっか!!」 「おお、そうだな。いこう、ミウ。」 「うぅっ〜〜!!」 そうして俺とミナトとミウは、ミナトの家でハロウィンのための飾りつけをして 有意義な時間を過ごした・・・。 (おわり)
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