カスタマイザー 第5話「久々の目覚め」

あれから三ヶ月後。
本物に成り替わった偽物の『私』は三日に一回程度、この研究室を訪れていた。
訪問の理由は研究を進めることと私の様子を見ること。

私が飲まされた睡眠薬はとても強力なものであり、それを飲むと冬眠のような状態とな
り私はしばらくの間、コールドスリープしているかのように目を覚まさなかった。

今日も『私』は眠っている私の様子を見に来た。

「うくく。今日もぐっすりと眠っているようだね。君の家族も友達も俺のことを本物の
どこにでもいる普通の女子中学生、外崎 麻奈美として認識しているようで正体はバレて
いないからそのまま安心して眠り続けるといいよ」

少女は気持ち良さそうにスヤスヤと眠り続けた。

「君のその寝顔、可愛いね」

ちゅぱっ・・・・

偽物の『私』は眠っている本物の私の口元にキスをした。

「さてと研究を続けるか・・・・。そして俺の力でこのくだらない世界をカスタマイズ
してやるよ」

『私』はそう言い残しその場を去って行った。



そして・・・・・ いったい、どのくらい時間が経過したのだろうか・・・・ 私は薄暗い部屋で目を覚ました。 私が監禁されている部屋の扉はすぐに開けることができた。 私は意識が未だ朦朧としながらも地下の部屋から出て階段を昇り地上階についた。 辺りを見渡すと日の光が差し込む。研究室は荒れ果てておりその場所はもはや廃墟と化 していた。 近くを見ると椅子には白骨遺体が座っている。 セーラー服の上に白衣を着ており、なんとなく小柄な少女を連想してしまった。 白骨遺体、荒れ果て古くなった研究施設の状態から私が眠ってから目覚めるまで大分時 間が経過しているようだった。 白骨遺体のそばには日誌が落ちていたので私はそれを読んでみた。 それによると『私』は死亡するまで少女姿の私に変身したまま熱心に研究し続けていた ようだった。 私はそれを覗くと驚愕のあまり身体が震えた。それはすぐには信じられないものだった。 どうやら私が眠っている間、『私』は研究を順調に進め人類を滅亡させるウイルスを開発し ていたようだ。 それに感染すると人体の遺伝子データが造り変えられて不安定な状態となり常時触れた 相手の人間に他者変身してしまうものだった。 そうしているうちに自身の身体は傷付き数時間から数日掛けて死に至るというもの。 そして他のデータを漁って分析しているうちに私が眠ってからこうして目覚めるまでお よそ300年が経過していることがわかった・・・・。 私は建物を出てみた。 今は昼の12時頃だろうか。 空には雲ひとつなく太陽が日中を昇っている。気温は25℃前後と初夏を思わせる天気 だった。 すぐには受け入れがたいことだが、私は廃墟と化してしまった街を眺めながら私以外に 誰も住んでいない造り変えられたこの世界をこれからどうしようかと考え私は決心した。 そして久々に目覚めた私はこの世界でたったひとりだけで暮らし続け最後まで生き抜く と誓うのだった・・・・・。

(了)

        

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